燃焼室の形状

酒呑童子のエコラン講習

図は1986年1月の内燃機関誌に恩田隆雄氏が発表した記事より引用させていただきました。

ホンダモンキー/ゴリラ用Z50J形エンジンという表題です。

上の図が改良前の燃焼室断面、下が改良後です。

本文によれば改良の狙いは、

「混合気流に適度な乱れを発生させて、火花点火の確立と燃焼速度を速めるためにシリンダヘッドとピストン頭部との間に、スキッシュエリアを設けた。また、火炎伝播距離の短縮と熱損失の低減を図るため、燃焼室の球形半径22.5mmを18.5mとし、燃焼室形状をコンパクトにした。」

燃焼効率の良い燃焼室形状とは、こういう狙いで作るものです。

スキッシュエリアとは何だ?と思った人はお勉強の機会です。

燃焼室の全体的な形も、ピストントップが盛り上がったペントルーフ形状から、ピストンがくぼんだ形状になって、全体として球形に近づけています。

また、吸排気バルブの径も小さくなっていることが見て取れますが、これは絞ったことで空気の量を減らしているわけではなく、

「吸排気系の体積効率に寄与する動的効果を積極的に利用するために、---吸排気バルブ径もポート径も小さくして---かつ通路の断面積変化を出来るだけ少なくして流れをスムーズにしたことで、体積効率の向上を図ることが出来た。」

ということです。

以前にもエコラン参加者の中には、「吸気系を絞ることは吸気損失を増加させてエンジンの損失を増大させるので、すべて悪」と断じて、結果的に一向に記録が伸びない人も居ました。

エンジンというものはそれほど単純ではないのですよ。

図は記事から切り出してくる都合で、同じ縮尺になっていませんが、ボア径が同じとして見てください。